マルチタスクで疲れるのはなぜ?切り替えのたびに積み直している
通知に返事して戻ってきたら、さっきまで何をしてたか思い出せない。タスクは5個進行中、完了は0個の夕方。「ちょっといい?」の合計で一日が消えた。一つのことだけやれた日の、あの静かな充実感をずっと知っている。
マルチタスクが得意そうな同僚を見ると、自分の仕事のやり方が悪いのかと思ってしまう。でも何度試しても、同時進行はどれも中途半端になって消耗だけ残る。
先に結論を言います。マルチタスクで疲れるのは、能力の問題ではありません。切り替えのたびに頭の中を積み直すコストがかかっていて、そのコストが人より高い体質があります。並行を直列に変える設計で、同じ仕事量でも消耗が変わります。
この記事を書いているのは、無料の『心の体力(MP)診断』です。自分が何で疲れて、何で回復するのかを確かめられます。

マルチタスクが苦手なのは、能力の問題ではない
「マルチタスクができない」を自分の能力不足として受け取っている人が多いですが、これは体質の話です。切り替えに要るコストが人によって本当に違います。
コストが低い人は、Aを一度中断してBに切り替え、またAに戻ることが軽い。コストが高い人は、同じ動作でも大きなエネルギーが要ります。これは練習でゼロにできるものではなく、仕事の設計で対応するものです。
予定の変更でも同じ切り替えコストが起きます。予定変更で疲れる仕組みは「予定が変わると疲れる」でも分解しています。

切り替えるたびに、頭の中を積み直している
なぜ切り替えにコストがかかるのか。一つの仕事をするとき、頭の中には「今どの段階か」「次に何をするか」「気をつけることは何か」という情報が積み上がっています。集中するほど、この積み上げは高くなります。
そこに割り込みが来ると、この積み上げを一度崩して、別の仕事の積み上げを作る作業が始まります。割り込みが終わって元の仕事に戻ると、また積み上げ直しです。1回の切り替えで、この積み上げ・崩し・積み上げが2回起きます。これが連続すると、仕事が進んでいない感覚と消耗だけが残ります。
MP診断では、この消耗の仕方を『ショートスライム』というキャラクターで表しています。割り込みと「あれもこれも」でペースを失った瞬間、頭が真っ白になる。悪いのは自分の能力ではなく、積み直しのコストが高い状態で切り替えを繰り返しているからです。
自分がこのスライムに近いかどうかは、無料の診断で確かめられます。
細切れの一日は、休みなく走った一日と同じ
「大した仕事はしていないのに疲れた」という感覚は、細切れの日によく起きます。
集中が3分あって割り込みが10分、また集中が5分あって別の割り込みが来る。それぞれの作業は大変ではなくても、切り替えが積み重なると、体感としては「ずっと走っていた」日と同じ消耗になります。実際には休憩もしているのに、節目なく使い続けた状態です。
細切れの一日が終わった後に何もできなくなる仕組みは、帰宅後に何もできないでも分解しています。
切り替えのコストの高さと、保持できる並行数は人によって違います。自分の中身は、無料の診断で確かめられます。
「同時にやってるように見える人」の正体
マルチタスクが得意そうに見える同僚は、実際に同時にやっているわけではないことが多いです。
切り替えコストが低いため、「素早く直列に処理している」のが「同時にやっている」ように見えます。また、通知に返事することと、深い仕事をすることを分けている人も多い。浅い作業と深い作業を混在させていないから、積み直しのコストが最小で済んでいます。
切り替えコストの個人差は実在します。低い人の真似をしても、コストは下がりません。自分のコストに合わせた設計にするほうが確実です。
並行を直列に変換する仕事の設計
対処は三つです。どれも「マルチタスクできる人になる」ではなく、「並行を直列に変換する」設計です。
①時間帯とテーマを対応させる
「午前は1テーマだけ」のように、時間帯と仕事の種類を固定で対応させます。メールとチャットの返信をまとめてやる時間、深い仕事だけをやる時間を分ける。混在させないことで、積み直しの回数が減ります。
②通知確認の時刻を固定する
通知が来るたびに確認するのをやめて、「11時・14時・17時の3回だけ確認する」のように時刻を固定します。緊急の相手にだけ例外ルールを先に伝えておく。MP診断のキャラクターでいえば、『らいじんスライム』が使っている「即答する代わりに30分後に返しますと挟む」という対処です。これで切り替えが起きる回数を設計できます。
③中断時に一行メモを残す
中断が避けられない場合は、「次に何をするか」を一行だけ書いてから離れます。戻ってきた時に積み直しのスタート地点がメモとして残っているので、再構築が軽くなります。
割り込みが多くて、直列にしたくてもできない仕事の場合
「仕事の設計を変える」と言われても、そもそも割り込みが仕事の一部だから無理、と感じた人がいると思います。事務や受付、管理職、接客のように、電話・チャット・話しかけられるが前提の仕事では、割り込みをゼロにすることは現実的ではありません。そういう仕事が存在するのは事実です。
ただ、一点だけ分解させてください。消耗の正体は、割り込みの回数そのものより、中断のたびに頭の中を積み直す作業にあります。割り込みを消すことはできなくても、積み直しのコストを下げることはできます。
具体的には次の二つです。
①「戻り先メモ」を場面に固定する
席を立つ時、電話を取る前の一瞬に、今やっていたことを一行だけ書きます。「〇〇の確認、△△まで終わった。次は□□」の粒度で十分です。戻ってきた時に、積み上げを最初から組み直す必要がなくなり、再開が軽くなります。メモを書くかどうかを毎回考えないことがポイントです。「席を立つ前は必ずメモ」と動作に固定することで、疲れていても自動的に動きます。
②「割り込みを受ける時間帯」と「受けない時間帯」を先に宣言する
「午前中の9時から10時だけは集中枠にする」とチームに先に伝えておくと、その時間帯に話しかけられる回数が減ります。チャットのステータス表示を「作業中・返信は10時以降」に変えておくだけでも効果があります。完全にゼロにはできなくても、割り込みが集中する時間帯と、まとめて受け付ける時間帯に分かれれば、積み直しが起きる回数は設計できます。
①と②を同時に始める必要はありません。まずメモの習慣だけを一週間試して、戻ってきた時の頭の立ち上がり方が変わるか確かめてみてください。変化が感じられたら、次に宣言の仕組みを足します。
割り込みだらけの環境でも、積み直しのコストを下げる余地はあります。「環境を変える」と「自分の動きを変える」は別の問題です。変えられる部分から手をつけてみてください。
深く潜れる集中は、希少な強み
一つのことに深く集中できる力は、切り替えコストが高い人が持っていることが多い強みです。浅い作業を素早く切り替えるより、深く潜って質の高い成果を出す仕事に向いています。
「マルチタスクが苦手」を直そうとするのではなく、一点集中が活きる仕事の組み方に変える。チームの中でも、「深く潜る人」の役割は貴重です。
なお、消耗が長く続いて集中すること自体がつらくなっていたり、生活全体に支障が出ている場合は、心療内科やカウンセリングなど専門機関に相談する選択肢もあります。
自分の切り替えコストを確かめるには
自分の切り替えコストがどのくらい高いか、保持できる並行の数は何件かは、自分では見積もりにくいものです。
無料のMP診断では、あなたが何で疲れて、何で回復するのかを16種類のキャラクターで返してくれます。切り替えコストと集中の仕組みが分かると、仕事の設計の仕方が変わります。
自分の切り替えコストが分かると、仕事の組み方が変わります。まずは自分が何で消耗しているのかを確かめるところから始めてみてください。
無料でMP診断をやってみる →まとめ
- マルチタスクの疲れは能力不足ではなく、切り替えのたびに頭の中を積み直すコスト
- 細切れの一日は休憩があっても「休みなく走った日」と同じ消耗になる
- 対処は並行を直列に変換すること。時間帯ごとにテーマを固定する
- 通知確認の時刻を固定し、中断時は「次やること一行メモ」を残してから離れる
- 深く潜れる集中力は強み。一点集中が活きる仕事の組み方に変えてください